カラーグレーディングとカラーコレクション 映像表現についてのTips
おはようございます。
6日目です。
どういう内容を書いたら面白いんだろうか、あまり読んでもらわなくても良いやと思いながら書いてるんですが、せっかくなら誰かの役に立ったり面白い方がいいですよね。
今日は動画や写真を撮る・編集する際の「色味」について書いてみようと思います。
お題は「カラーグレーディング」と「カラーコレクション」。
映像表現の奥義みたいなやつです。
一般的なワードではないと思うのですが、映像や写真を、機器が撮ったそのままではなく、自分の表現したい色味に変更することを「カラーグレーディング」とか「カラーコレクション」といいます。
よく混同されがちな2つなんですが、
「カラーコレクション」は、撮影機器が撮ったままの映像や写真の色味を、目で見た実物と合わせるように加工・編集することを指します。
よりリアルに、生っぽくするわけです。また、人は加工されすぎると綺麗な色味でもリアルを感じにくくなるので、食欲をかき立てたい食べ物に関する映像や、バラエティ番組などポップさ(身近な感覚)が必要な場合はこちらの表現を活用します。
「カラーグレーディング」は、目で見たリアルな色は一旦置いておいて、それよりも自分の見せたい色や表現を優先して色味を加工することを言います。スマホの色味フィルターとかはこっちに近いです。テレビよりも映画でよく使われる技法で、いわゆるシネマティックな、アーティスティックな色味を追い求めたりするのがこちらです。
映画でよく使われるのは俗にいう「オレンジ&ティール」とか言われるものですね。これは補色関係にあるオレンジと青緑(コガモ色らしい)の彩度を上げることで、色味のダイナミックレンジを拡張し、第一印象を綺麗に感じさせる意図で使われます。
また、よく「撮って出し」なんていう表現をしますが、全くそういうカラー調整をせず撮ったままを使うこともありますよね。
これはじゃあ「カラーグレーディング」や「カラーコレクション」を行っていないのかというと、そうではありません。
スマホやカメラ機器というのは、センサーが捉えた色味をそのまま出しているのではなく、各メーカーがより高画質に感じられるようにと色味の補正を自動でかかるようにしているのです。
見る人が見れば、「あ、この写真はiPhoneっぽい色だねとか、Canonの色だね」みたいなことがわかります。
よくCanonは人肌の色味が綺麗に出るとか、Sonyは青みが強くサイバー感が出るという風に言いますね。
メーカーが意図した色を乗せたまま色味の編集をすると、カラーパレットに何色もいきなり混ぜたようにギトギトした色味になってしまうので、あえてそう言った補正をかけないで出力する、「RAW」という撮影方法もあります。
一般的にRAWで撮ったものは、メーカーによるカラーコレクションが行われる前の、センサーが捉えたそのままの色味になりますから、若干薄い、パッとしない感じの色味になります。
イメージセンサーのシェアはソニーがトップなので、ほとんどのカメラで撮った場合はソニーのイメージセンサーの色で出てくることになり、RAWでの色味差はそこまで大きくないです。
SonyでもCanonでもNikonでも、RAWで撮影してカラーグレーディングやカラーコレクションを自分で行えば、同じような色味を作ることが可能です。技術は要りますけどね。スマホだとRAWが撮れない機種も多いので、表現の幅が狭くなります。
映像表現では、センサーが捉えたままのRAWという撮影方法をとると、とんでもない容量のファイルになってしまうため、「すごく薄い色で撮ってから後で色を乗せて補正する」という方法がとられます。
これを「Log撮影」という風に言います。
各社でどんな風に薄い色にするか、というアルゴリズムが異なるため、S-Log(SonyのLog)やC-Log(CanonのLog)というように全部違うものとして扱われ、表現したい色や元の色味に近づける「Lut」というファイルも、各メーカーから独自に調整され出されています。
複数のカメラ機材、特にメーカーの違うカメラ機材を用いてマルチカメラにしたり、それを繋ぐような表現をすると、かなり色味がアベコベになってしまうことがあるので注意が必要です。
また、「元の色味」なんてものはそもそも存在しないということも覚えておく必要があります。
カメラのセンサーで捉えられる色味のダイナミックレンジは、私たちの目で捉えられる色味のレンジよりもはるかに狭いのです。それを無理やり、明るい部分や暗い部分の情報を削ることで、PCやスマホで扱いやすいファイルのサイズにしています。
白飛びや黒つぶれ、もうその部分には情報が含まれていない、という状態ができるのはそのためです。
なので、映像や写真を綺麗に見せたい場合には、意図を持って色味を積極的に調整することが不可欠になってきます。
例えば、食欲を掻き立てるような食べ物の撮影をしているのに、アーティスティックなカラーグレーディングを施すと、映像としては綺麗でも、食欲は減退するでしょう。
身近な感覚を売りにしているバラエティ番組でも同様で、映画風のカラーにしてしまうと、多分笑えなくなってしまったりします。
ライブ映像などを作る場合、これはリアルな色味を出して生っぽさを味わってもらいたいのか、曲の世界観を後押しするためにアーティスティックな色味とするのかの判断をする必要があります。
ただ単に綺麗で高画質なだけでは、「綺麗だね」という感じになってしまって、それだけです。
これは結構センスの部分なので、一律にこのプリセットを当てればオッケー、というものではありません。
沢山映画や映像作品をそういう眼で観て観察をしたり、再現しようとしてみたりして感覚を磨いていくしかないと思います。
センスだけでなく、理論的な理解や経験も大事です。
こんな編集をするから、撮影段階では後で扱いやすいようにこんな風な設定で撮っておこう、という事前計算も必要になってきます。
一般的に写真のRAW撮影では暗めに撮ってあとから明るく、動画のLog撮影では明るめに撮って後から暗くします。それぞれ得意なダイナミックレンジや補正の考え方が違うので、理屈を理解した上で臨機応変に適用を考えることが必要なのです。
難しいですが、それができると、作者の意図が汲めたり、深みのある表現ができるようになると思います。
なんだか色々書いてきましたが、僕も今そう言ったことを勉強中です。
観た映画の綺麗なシーンの色味を、その辺で撮ったものとすり合わせをして再現してみたり、色んな角度から勉強しています。ほんのちょっと色味が変わるだけで全然違う印象になったりするんですよね。
専門的に勉強するとめちゃくちゃ難しくて永遠に勉強が終わらないような内容になるので、もし興味のある方はさわりだけ、1ヶ月くらいyoutubeや書籍で勉強してみると面白いのではないでしょうか。全然ものの見え方が変わって面白いですよ。
それでは良い1日を。